98・6・13「夢の遊眠社”野獣降臨”をみる。もちろん、ビデオで。」

最近ちょっと冴えなくてどうしようもなかったのですが、ふっと、遊眠社が観たいなと思って、久々に「野獣降臨」のビデオをみました。

遊眠社は芝居を観はじめる前、ぴあで桜の森の再演や、透明人間の蒸気なんかの案内を観ていて、ぜったいこの人のことは好きに違いない。と思っていたのですが、芝居を観に行くことにふんぎりがつかなくって、ずっと見逃してしまっていました。で、あるときたまたま天野祐吉さんの「夜中の学校」に野田さんが出演されるのを知り、どんな人なんだろうと思いながら、観てみました。番組の頭で稽古の様子が少しだけ写ったのですが、これが、ほんとに少しだけだったのですが、すごく惹きつけられ、一瞬のうちに虜になってしまい、クレジットされていたビデオを探す日々が続きました。芝居のビデオなんて、どこに売ってるかまったくわからなかったので、たくさんレコード屋をまわったりしたのですが見つけられず、やっとバイト先の近くのレンタル屋さんでみつけました。TVで流れていたビデオは「もうひとつあってもいい。」だったのですが、それは貸し出し中だったので、「野獣降臨」と「半神」を借りてきました。

そして観たのが「野獣降臨」でした。それは、もう、今まで観たことのないもので、ものすごく衝撃を受けました。1回目観たときは、たぶん、ほとんどよくわかっていなかったと思うのですが、その圧倒的な世界に、ぼろぼろ泣いていました。

今回、久しぶりに、何年ぶりかに「野獣降臨」を観て、やっぱり、ものすごくすばらしくって、涙が出ました。ほんとに、ほんとにすばらしくって、心がふるえました。

野田さんの言葉が万華鏡のようにきらきらと光ってとても美しく、ひるこの想いと孤独が胸に迫って、とても哀しかったです。

「野獣降臨」が最初に観た遊眠社でわたしはとてもよかったと思っています。大切な大切な宝物です。これがなかったら、わたしはこんなには芝居を観てなかったような気がします。わたしにとって、芝居を観るということは、月の明かりに照らされた、静まり返った町にこっそりと出て、木の電信柱にそっと耳をつけて、太古の物語を聴いている…ということなのです。これからも、わたしはこの気持ちをそっと持ち続けながら、琥珀色したエーテルの運河を流れていきたいなぁと思っています。